新規事業に有効なリーンスタートアップとは 意味や成功事例について解説

リーンスタートアップとは?
リーンスタートアップは、アメリカの起業家 エリック・リースによって提唱されたスタートアップのための方法論で、最小限のリソースを使用して製品やサービスを迅速に市場に投入し、顧客の反応を基に改善を繰り返すことで無駄を削減、リスクを軽減しながら効率的な事業開発を進める手法のことをいいます。
新規事業や新製品の開発には、多額の投資と労力をかけたにも関わらず成功せずに回収ができなくなるようなリスクがあります。しかしこのようなリスクを軽減し素早く市場が求める製品・サービスを販売する為に非常に有効な手法です。
リーンスタートアップの進め方
①リーンスタートアップは「構築」(Build)、「計測」(Measure)、「学習」(Learn)の3つのプロセスを短期間で繰り返します。(フィードバックループ)
構築(Build)
ある想定された顧客がある新規サービス、製品を必要としていると仮説を立て、新規事業のアイデアを練ります。そして、最小限の機能を持つ製品(MVP: Minimum Viable Product)をなるべくコストをかけず迅速に構築します。MVPは、事業アイデアの核となる仮説をテストするために必要最低限の機能だけを備えた製品です。
計測(Measure)
構築プロセスで作成したMVPをアーリーアダプターと呼ばれる流行に敏感で、情報収集を自ら行い、判断するような人々に提供して、その反応を計測します。
MVPを市場に投入し、顧客からの反応を具体的なデータとして収集します。この段階では、顧客の行動を詳細に測定し、事業仮説の正しさを評価します。
学習(Learn)
アーリーアダプターから得た反応や意見など収集したデータを分析し初期の仮説が正しいかどうか検証します。正しいと判断された場合は、MVPを改良して顧客に受け入れられるものにする。また、アーリーアダプターの反応、意見から最初に立てた仮説そのものが誤りだと判断されることもある。その場合は、仮説を見直しまたは事業アイデア自体を変更します。
②ピボットorペルシスト
学習プロセスで仮説を見直すことになった場合、仮説そのものを見直し事業方針を方向転換することを「ピボット」といいます。
収集した学習に基づき、事業方針を「ピボット」(方向転換)するか「ペルシスト」(現在の方向を継続)するかを決定します。
③継続的なフィードバックの活用
実現性検証フェーズでは、この構築・計測・学習のサイクルを継続的に繰り返します。(フィードバックループ)これにより、市場の変化や新しい顧客の洞察に迅速に対応し、事業アイデアを精緻化していきます。
リーンスタートアップの注意点
これまで新規事業、新製品・サービス開発に有効な手法だと解説してきましたが、リーンスタートアップの手法にはメリットとデメリットがあります。これを知ることで新規事業開発や新製品開発に有効かどうかの判断する際の参考として解説します。
メリット
- コストと時間の削減
最小限の製品(MVP)を用いることで、開発の初期段階での時間とコストを削減できます。新規事業や新製品開発にかかるコストを最小限にすることで投資リスクも軽減できます。 - 市場適合性の確認
実際の市場の反応を見ながら製品を開発するため、市場への適合性を早期に確認できます。
プロダクトアウト(製品至上)ではなく、マーケットイン(顧客至上)での製品開発を短期に実現することが可能です。 - リスクの低減
フィードバックを基に迅速に調整を行うため、失敗のリスクを最小限に抑えることができます。
デメリット
- 焦点の喪失
頻繁なピボット(事業方針の変更)により、長期的なビジョンが失われがちです。新規事業や新製品の目的やビジョンが明確にできてない場合、プロジェクトそのものがブレてしまいます。 - 品質の問題
MVPが必ずしも最高品質ではないため、初期のユーザーからの悪い評価を受けるリスクがあります。 - 過度な依存
リアルタイムデータやフィードバックに過度に依存することで、大局的な戦略がおろそかになることがあります。
注意するポイント
リーンスタートアップではバランスが重要です。これらのメリット、デメリットを踏まえフィードバックに基づく迅速な意思決定と、長期的な事業戦略の間で適切なバランスを見つける必要があります。
リーンスタートアップが向いている業種と不向きな業種
これまで、リーンスタートアップは新規事業開発や新製品開発に有効な手法だと解説してきましたが、すべての業種に向いているわけではありません。そこで、リーンスタートアップが向いている業種と向いていない業種について解説します。
向いている業種
- テクノロジー業界
ソフトウェア開発やデジタルプロダクトは、迅速にプロトタイピングとテストが行えるため、リーンスタートアップに適しています。 - 消費者向けサービス
B2C向け製品やサービスはユーザーから直接フィードバックを得やすいため、適しています。
不向きな業種
- 重工業や製造業
高い初期投資が必要で、製品の変更が難しいため、リーンスタートアップのアプローチが取りにくいです。 - 規制が厳しい業種
医療、金融などの規制が厳しい業種では、製品開発の前に広範な承認が必要であり、リーンスタートアップの迅速な試行錯誤が困難です。
リーンスタートアップの成功事例
海外の企業事例
Zappos
海外の企業でリーンスタートアップの手法を採用し、顕著な成功を収めた例として、Zapposを紹介します。Zapposはオンラインで靴と衣類を販売する会社で、顧客サービスに重点を置くことで知られています。
Zapposの事例詳細
Zapposの創業者ニック・スウィンマーンは、オンラインでの靴の販売ビジネスモデルを試すために、非常に簡素なウェブサイトを立ち上げました。彼は最初に自分が靴を買い、それをオンラインで販売するという非常にシンプルなアプローチを取りました。この初期の試みは、彼が市場の反応をテストし、ビジネスモデルの実現可能性を評価するための最小実行可能製品(MVP)として機能しました。
創業当初、Zapposは在庫を持たず、注文が入ると地元の靴屋から直接顧客に商品を送るというドロップシッピングモデルを採用しました。このアプローチにより、大規模な初期投資を避けながら市場ニーズを評価することができました。
顧客からのフィードバックを受けて、Zapposは顧客サービスに特化したビジネスモデルに移行しました。彼らは、返品ポリシーを緩和し、顧客の購入体験を向上させるために無料の往復送料サービスを導入するなど、顧客満足度を最優先に考えたサービスを展開しました。
この顧客中心のアプローチは大成功を収め、Zapposは急速に成長しました。最終的に2009年にアマゾンに10億ドル以上で買収されるほどの企業に成長しました。この成功は、リーンスタートアップの原則に従い、顧客からのフィードバックに基づいて迅速に反応し、製品とサービスを改善していった結果です。
国内企業の事例
マネーフォワード
日本においてリーンスタートアップ手法を採用し、成功を収めた例として、マネーフォワードを紹介します。マネーフォワードは、個人向け及び法人向けのクラウド会計ソフトウェアを提供しているフィンテック企業です。
マネーフォワードの事例詳細
マネーフォワードは、創業当初から顧客のニーズを深く理解し、それに応えるサービスを迅速に市場に提供するために、リーンスタートアップの手法を積極的に採用しました。特に、最小限の機能を持つプロダクト(MVP)を用いて市場の反応をテストし、そのデータに基づいて製品を迅速に改良するアプローチをとっています。
最初にリリースしたのは、個人向けの資産管理ツールでした。このツールは、ユーザーが自分の金融情報を一元管理できるというもので、初期のバージョンでは非常に基本的な機能のみを提供しました。しかし、ユーザーからのフィードバックを集めることで、どの機能が最も必要とされているかを迅速に把握し、プロダクトの改善を行いました。
収集したフィードバックに基づき、マネーフォワードは機能を追加し、ユーザーインターフェースを改善していきました。例えば、自動での取引データの取り込み、多様な金融機関との連携の強化、セキュリティ機能の向上など、ユーザーが直面していた問題を解決するための機能を段階的に導入していきました。
このリーンスタートアップアプローチにより、マネーフォワードはユーザー基盤を迅速に拡大し、顧客のニーズに密着した製品改善を継続的に行うことができました。その結果、個人向けだけでなく、後には法人向けのサービス展開にも成功し、日本国内でのフィンテック業界におけるリーダーの一つとなっています。
まとめ
多くのテクノロジー企業やスタートアップがこのリーンスタートアップの方法論を採用しています。例えば、新しいアプリ開発では、機能の限られたバージョンを先にリリースし、ユーザーの反応を見ながら徐々に機能を追加していくというアプローチが取られます。
リーンスタートアップは、特にリソースが限られている状況や、市場の不確実性が高い新規事業において、非常に有効なフレームワークです。実現可能性を段階的に検証することで、大きな失敗を未然に防ぎつつ、市場適合する製品やサービスを開発できます。
是非、新規事業や新製品・サービスの開発の検討に活用ください。
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