マーケティング4Pと4Cを徹底解説:中小企業が知っておくべき実践的フレームワーク

①マーケティングミックスとは?

マーケティングミックスとは、企業が顧客に製品やサービスを提供する際の要素を組み合わせた戦略のことです。
この中で最もよく知られているのが4Pと4Cのフレームワークです。4Pは企業視点での分析を行うため、製品の設計から販売までを網羅します。一方で、4Cは顧客の視点に立ち、顧客が求める価値や利便性を重視します。
②4Pとは?

2-1.時代背景と4Pの誕生
4Pが提唱された1960年代は、製品を作れば売れるという時代であり、企業視点での製品開発が主流でした。
この時代背景は、フィリップ・コトラーが提唱する「マーケティング1.0」の時代に対応します。
4P分析は製品を中心に据え、どのような製品(Product)を、いくら(Price)で、どのような店舗(Place)で、どのような告知(Promotion)で販売するのかを可視化するためにエドモンド・ジェローム・マッカーシーによって提唱されたマーケティングミックスのフレームワークです。

- Product(製品): 顧客に提供する商品やサービスそのもの。
- Price(価格): 製品の価格設定とその戦略。
- Place(流通): 製品をどこでどのように提供するか。
- Promotion(プロモーション): 製品やサービスをどのように宣伝するか。

③4P分析のやり方
4P分析は、各要素をどのように考え、企業が最適な戦略を立てるためのものです。
Product(製品)
製品とは、顧客に提供する商品やサービスそのものを指します。製品分析では、以下のポイントに注目します。
- ターゲット層
どの層をターゲットにしているか(年齢、性別、職業、趣味嗜好など)。 - 製品の機能・特徴
製品がどのような機能を持ち、どのような価値を提供するか。例えば、スマートフォンであれば、カメラの性能やバッテリーの持ちなど。 - 製品のデザインとパッケージ
見た目のデザインやパッケージの魅力が購買意欲に与える影響を分析します。 - 競合製品との違い
競合製品と比較して優れている点や、独自の魅力を持つ部分を明確にします。
Price(価格)
価格設定は、企業の利益と顧客の支払い意欲のバランスを取るために非常に重要です。
価格分析では、次のポイントを考慮します。
- コスト分析
製造コストや販売コストを考慮し、適正な利益を確保する価格設定を行います。 - 価格の競合比較
競合他社がどのような価格設定をしているかを調査し、自社の価格が高すぎるか安すぎるかを判断します。 - 価格戦略
プレミアム価格戦略(高価格で高品質を訴求)や、浸透価格戦略(低価格で市場シェアを拡大)など、どの戦略を採用するかを決定します。 - 価格弾力性
価格の変動が顧客の購買行動にどのように影響を与えるかを考慮し、最適な価格帯を設定します。
Place(流通)
流通とは、製品をどこでどのように販売するかを指します。流通戦略を考える際には以下の点を検討します。
- 販売チャネルの選定
直営店、オンラインストア、量販店、スーパーマーケットなど、どのチャネルを利用するかを決定します。 - 流通コスト
製品を顧客に届けるまでにかかる配送コストや、在庫管理のコストを考慮します。 - 地域戦略
製品を販売するエリアを選定し、地域ごとの需要や競合状況に合わせて販売戦略を調整します。 - 顧客アクセスの最適化
顧客が製品に簡単にアクセスできるように、流通経路を最適化します。例えば、オンラインでの即日配送や、店舗での体験型販売などです。
Promotion(プロモーション)
プロモーションは、製品やサービスを顧客に知ってもらい、興味を持ってもらうための活動です。効果的なプロモーションを行うためには以下の要素を考慮し策定します。
- 広告戦略
テレビ広告、ラジオ、SNS、検索エンジン広告など、どのメディアを使用して製品を訴求するかを決定します。 - 販売促進活動
割引キャンペーンやクーポン配布、ポイントプログラムなど、短期的に売上を向上させるための施策を検討します。 - PR活動
メディアやインフルエンサーを活用して、ブランドや製品の認知度を高める施策を検討します。 - イベント・展示会
製品の体験を提供するためのイベントや展示会でのプロモーション活動を検討します。
④4Cとは?

4-1.時代背景と4Cの誕生
1970年代に入ると、企業が提供する製品の種類が増え、他社と差別化を図ることが難しくなってきました。そのため、企業は顧客のニーズを理解し、製品開発から販売方法までを顧客視点で考える必要が生じました。
これは、コトラーが「マーケティング2.0」として提唱した時代に対応します。4Cは、顧客の視点からマーケティング戦略を見直し、顧客が求める価値や体験に焦点を当てたフレームワークです。
4Cは、1990年代にロバート・ローターボーンによって提唱されました。彼は、従来の4Pが企業目線であったのに対し、顧客目線のマーケティングが必要であると考え、4Cという新たなフレームワークを提案しました。

- Customer(顧客): 顧客が求めるニーズに応えること。
- Cost(コスト): 顧客が感じるコスト全体を考慮する。
- Convenience(利便性): 製品やサービスがどれだけ簡単に手に入るか。
- Communication(コミュニケーション): 双方向のコミュニケーションを通じて顧客との関係を築く。
⑤4C分析のやりかた
4C分析では、顧客視点での要素を深く掘り下げます。
Customer(顧客)
顧客のニーズや課題を理解し、それに基づいて製品やサービスを提供することが中心です。具体的には以下のポイントを分析します。
- 顧客のペルソナ作成
理想的な顧客像を明確にし、年齢、性別、職業、趣味、ライフスタイルなどの情報を具体化します。
関連記事:ペルソナマーケティングとは? 概要や必要性、作り方などを詳しく解説 - ニーズ分析
顧客がどのような問題を抱えているか、どのような価値を求めているかを理解します。例えば、顧客の声やアンケート結果、SNSの意見などを収集して分析をします。 - 購買プロセスの理解
顧客がどのような経緯で製品を知り、どのタイミングで購入を決断するのかを把握します。
こちらはカスタマージャニーマップを作成することで可視化することができます。
関連記事:カスタマージャーニーとは? 概念やマップの作り方を徹底解説 - 顧客満足度の向上
顧客の期待を超えるサービスや製品を提供することで、長期的な信頼関係を築く方法を検討します。
Cost(コスト)
顧客が負担するコスト全体を考慮し、製品やサービスが顧客にとってどのような費用感を持つかを考えます。それでは具体的なポイントを解説します。
- 顧客が感じる価格
製品の価格だけでなく、購入にかかる時間や手間、付随するサービス費用も考慮します。例えば、送料やメンテナンス費用など。 - コスト削減の方法
顧客にとってのコストを軽減するために、無料配送、定期購入割引、ポイント還元などの施策を検討します。 - 価値とコストのバランス
顧客が感じる価値と、それに対する支払い意欲を比較し、どのようにしてそのバランスを最適化するかを考えます。 - 購入後のランニングコスト
製品を使用する際に発生するコスト(例:車の燃料費や家電の電気代)を考慮し、顧客に伝えることも検討します。
Convenience(利便性)
Convenience(利便性)では、購入のしやすさやサービス提供の利便性を高め、顧客体験の向上について検討します。
- 購入のしやすさ
オンライン購入の可否、店舗の立地、営業時間、予約システムなど、顧客が商品を手に入れやすくする仕組みを検討します。 - 配送とサポート
迅速な配送サービスや、製品の組み立て・設置サービス、アフターサポートなど、購入後の利便性を高める方法を考えます。 - サービスのアクセス性
サービスの利用手順がわかりやすいか、問い合わせや相談がしやすいかなど、顧客が利用しやすい体制を整えます。 - 手間の最小化
購入プロセスを簡略化し、顧客が感じる負担を軽減する方法を検討します。(例:ワンクリック購入や自動更新サービスなど)。
Communication(コミュニケーション)
SNSやメールなどを使い、顧客との双方向のコミュニケーションを重視し製品やサービスに関する情報をどのように提供し、フィードバックを受けるかがを検討します。
- 双方向のコミュニケーション
SNSやレビューサイト、メールマーケティングを通じて顧客と直接コミュニケーションを取ります。 - 顧客からのフィードバックの活用
顧客の意見や要望を製品改良やサービス向上に反映し、より顧客のニーズに合致した製品・サービスの提供を目指します。 - ストーリーテリング
ブランドの背景や理念、製品の開発秘話などを顧客に伝え、共感を生みます。 - 情報提供の適時性
顧客が必要としている時に必要な情報を提供します。(例:新商品のリリース時にニュースレターを配信するなど)。
⑥4Pと4Cの違いと使い分け
4Pと4Cは、それぞれ企業視点と顧客視点の違いがあります。
4Pは製品やサービスをどのように提供するかを中心に考えますが、4Cは顧客がどのように製品を求めているか、どのような価値を感じるかに重点を置きます。
例えば、製品のデザインや価格設定を考える際には4Pを使い、顧客ニーズに合った販売方法やアフターサービスを考える際には4Cを活用すると効果的です。
新商品や新規事業の企画における連動策定のメリット
4Pと4Cを同時に考えることで、企業視点と顧客視点の両方から戦略を練ることができます。
例えば、4Pの「Price(価格)」は、企業にとっての製品の販売価格設定を意味しますが、4Cの「Cost(コスト)」は顧客が感じる全体的な費用負担を考慮します。このCostには、製品の価格だけでなく、店舗までの交通費や送料、購入にかかる時間なども含まれます。
こうして4Pと4Cを対で考えると、企業が提供する価値と顧客が感じる価値のギャップを埋めることができ、より競争力のあるマーケティング戦略が構築できます。

⑦マーケティングミックスの事例

Apple(アップル)
4P分析
- Product(製品):iPhoneやMacBookなどのプレミアム製品。
- Price(価格):高価格帯戦略でブランド価値を維持。
- Place(流通):Apple Storeや公式オンラインストアでの販売、体験重視の店舗設計。
- Promotion(プロモーション):独自の発表会や洗練された広告戦略。
4C分析
- Customer(顧客):先進的なデザインや機能を求めるユーザー層。
- Cost(コスト):高品質の代わりに高価格設定だが、長期使用を見込んだコストパフォーマンス。
- Convenience(利便性):Apple Storeでのサポート体制やオンライン購入の利便性。
- Communication(コミュニケーション):SNSやファンコミュニティを通じた密な顧客との関係構築。
Coca-Cola(コカ・コーラ)
4P分析
- Product(製品):多様な飲料ラインナップ(ゼロカロリー飲料や炭酸水など)。
- Price(価格):競争価格とプレミアム価格の両立。
- Place(流通):スーパーマーケットや自動販売機、オンラインストアなど多様な販路。
- Promotion(プロモーション):大型キャンペーンや季節限定ボトル、スポーツイベントのスポンサーシップ。
4C分析
- Customer(顧客):幅広い年齢層をターゲットにした親しみやすいブランド。
- Cost(コスト):手頃な価格での提供、特にキャンペーン時の割引やポイント還元。
- Convenience(利便性):自動販売機やコンビニなど、いつでもどこでも手に入る流通網。
- Communication(コミュニケーション):SNSキャンペーンやファン向けイベントの実施。
Nike(ナイキ)
4P分析
- Product(製品):スポーツシューズやアパレル、アスリート向けのプレミアム商品。
- Price(価格):品質とブランド価値を反映した価格設定。
- Place(流通):直営店、オンラインストア、大手スポーツチェーンでの販売。
- Promotion(プロモーション):スポーツ選手とのコラボレーション、ブランドストーリーを強調する広告。
4C分析
- Customer(顧客):スポーツ愛好家やファッションに敏感な若年層。
- Cost(コスト):高品質な素材とデザインに対してのプレミアム価格。
- Convenience(利便性):直営店でのフィッティング体験や、オンラインでのカスタマイズ購入。
- Communication(コミュニケーション):SNSやインフルエンサーを活用したファンベースの構築。
⑨まとめ
4Pと4Cのフレームワークを理解し、実践に活かすことで、企業は顧客ニーズに応える効果的なマーケティング戦略を構築できます。
ビジネス環境が急速に変化する現代において、顧客との信頼関係を築くためには、顧客視点を取り入れた4Cのアプローチがますます重要になっております。
これらのフレームワークを活用し、自社の強みを最大限に発揮して、競争力の高い商品開発や事業を構築されてください。


マーケティングミックスについての無料相談はこちらから
