モチベーション革命 | 生産性を高める組織の構築方法とは?

モチベーション理論は、従業員の動機付けがどのように行動、生産性、そして従業員満足度に影響を与えるかを探求しています。今回は、どのようにして個人のモチベーションを向上し、生産性の高い組織を作ればよいのか詳しく解説します。

目次

モチベーションとは何か?

モチベーションは個人が目標に向かって行動を起こす内的な動機や欲求です。大きく分けて、内発的モチベーションと外発的モチベーションの二種類があります。

内発的モチベーションは個人の内部から来る動機で、仕事そのものの楽しさや達成感から動機付けられるものです。外発的モチベーションは報酬や評価など、外部からの刺激によって動機付けられるものです。

時代の変遷とともに変わってきたモチベーション理論

1)マズローの欲求階層説(1940年代)

人間の欲求を生理的欲求、安全欲求、社会的欲求、承認欲求、自己実現欲求の5段階に分類し、下位の欲求が満たされた後に上位の欲求が動機付けの源となると説明しています。

2)ハーズバーグの二要因理論(1950年代)

労働環境を「衛生要因」と「動機付け要因」に分け、前者が不満を取り除くために必要で、後者が真の動機付けにつながるとしました。

ハーズバーグの二要因理論(Herzberg’s Two-Factor Theory)は、心理学者フレデリック・ハーズバーグによって1950年代に提唱されたモチベーションに関する理論です。この理論は、従業員の職場における満足度と不満足度が異なる要因によって引き起こされると主張しています。

具体的には、「衛生要因」と「動機付け要因」という二つの異なるカテゴリーに分類されます。

衛生要因(Hygiene Factors)

衛生要因は、職場の条件や環境に関連する要素です。これには給与、会社のポリシー、監督の質、対人関係、作業条件などが含まれます。ハーズバーグによると、これらの要因が不適切な場合、従業員は不満を感じる可能性がありますが、これらの要因が改善されても従業員のモチベーションが大幅に向上するわけではなく、単に不満が解消されるにとどまります。

つまり、衛生要因は不満を防ぐためには重要ですが、積極的なモチベーションを生み出すものではありません。

動機付け要因(Motivational Factors)

動機付け要因は、仕事の内容そのものに関連する要素で、仕事の達成感、認識、昇進の機会、責任の程度、個人の成長や仕事そのものの挑戦性などが含まれます。

これらの要因が充実していると、従業員は仕事に対してより満足感を得られ、モチベーションが向上します。動機付け要因は従業員の仕事への熱意や生産性を高める効果があります。

組織における応用

ハーズバーグの二要因理論は、職場での従業員のモチベーションと満足度を向上させるために、衛生要因を適切に管理し、動機付け要因を強化することの重要性を示しています。企業は、職場の環境を改善することで従業員の不満を最小限に抑えるとともに、仕事の自由度を増す、適切な認識とフィードバックを提供する、成長と発展の機会を提供するなどの措置を講じることで、従業員のモチベーションを効果的に促進できます。

この理論は、多くの現代の職場環境改善プログラムや従業員のエンゲージメント戦略の基礎となっています。

マクレランドの成就動機理論(1960年代)

個人が持つ成就、権力、帰属の欲求が行動の動機となると説明しています。

マクレランドの成就動機理論(McClelland’s Theory of Needs)は、心理学者デビッド・マクレランドによって1960年代に提唱された理論で、人々が行動する原動力となる主要なニーズ(欲求)を「成就欲求(Achievement Motivation)」、「権力欲求(Power Motivation)」、「帰属欲求(Affiliation Motivation)」の三つに分類しています。

この理論は、個人の行動やモチベーションを理解し、特に職場での生産性やリーダーシップのスタイルを解析する際に用いられます。

成就欲求 (Achievement Motivation)

成就欲求は、個人が自己の能力を用いて困難な目標を達成しようとする欲求です。成就動機が高い人は、挑戦的な目標を達成することに喜びを感じ、自己のスキルと努力に対するフィードバックを重視します。

彼らは通常、具体的なフィードバックを通じて自己の成果を評価しようとし、リスクは計算された範囲内で受け入れます。このタイプの人々は、個人的な達成感を得ることに強い動機を持っており、しばしば起業家やイノベーターとして活躍します。

権力欲求 (Power Motivation)

権力欲求は、他者に影響を与えたり、他者を支配したりすることを求める欲求です。権力動機が高い人は、影響力を行使することで満足を得ます。これは、肯定的な形(他人を助け、指導する)と否定的な形(支配し、コントロールする)の両方を取り得ます。

権力欲求が高い人は、リーダーシップのポジションに就くことが多く、政治家や経営者などがこのタイプに当てはまります。

帰属欲求 (Affiliation Motivation)

帰属欲求は、他人との良好な関係を築き、所属感や受け入れられることを重視する欲求です。帰属動機が高い人は、対人関係を大切にし、グループの一員としてのアイデンティティを強く感じます。

彼らはしばしば協調性が高く、対人関係においては調和を保つことを優先します。帰属欲求が高い人は、チームワークが重視される職場環境で活躍することが多いです。

組織における応用

マクレランドの成就動機理論は、組織において個々の従業員の動機付けを理解し、それに基づいて適切な仕事を割り当てたり、適切な報酬や評価システムを設計したりするのに役立ちます。例えば、成就欲求が高い従業員には目標達成が報酬につながるような業務を、権力欲求が高い従業員にはリーダーシップを発揮できるポジションを、帰属欲求が高い従業員にはチームワークが求められる業務を割り当てることが効果的です。

この理論に基づく人材管理は、従業員の満足度と組織のパフォーマンスの両方を高めることができます。

近年で取り入れられているモチベーション理論

セルフ・デターミネーション理論(SDT)

内発的モチベーションを中心に、自己決定性やコンピテンス(能力感)、関係性がモチベーションに与える影響を説明します。この理論によると、自己決定性の高い環境は従業員の満足度や生産性を高めることが示されています。

モチベーションのレベルと組織の生産性との相関

多くの研究が、高いモチベーションが高い生産性につながることを示しています。例えば、従業員が自分の仕事に意味を見出し、達成感を感じることができる環境では、より高い生産性が期待できます。

プロソーシャル・モチベーション理論

そして最も重要とされる理論がプロソーシャル・モチベーション理論だ。

プロソーシャル・モチベーションは、他人や社会全体の利益のために行動する動機付けを指します。この種のモチベーションは、個人が自己の利益を超えて、他者の幸福や福祉、社会の改善に貢献しようとする意欲を持っている状態を表します。

プロソーシャル・モチベーションの効果

  • 個人の満足度の向上
    プロソーシャル・モチベーションを持つ個人は、他者への貢献を通じて大きな満足感や達成感を感じることが多く、これがストレスの軽減や幸福感の向上に繋がることが研究で示されています。
  • チームや組織の効果性の向上
    チームメンバーが互いに協力し合い、互いの成功を支援する文化が促進されると、全体としてのチームの生産性や効果性が向上します。プロソーシャル・モチベーションはこのような協力的な環境を強化します。
  • 社会的評価と信頼の向上
    社会的に貢献する行動は、他者からの肯定的な評価を得やすく、信頼関係の構築に寄与します。これはビジネスの世界においても重要で、企業や組織が社会貢献を重視することでブランドの価値や信頼性が向上することがあります。
  • 個人と組織のアイデンティティの強化
    プロソーシャルな行動は、個人や組織のアイデンティティを形成し、強化する一因となります。従業員が自分の働く組織が社会的な良い影響を与えていると感じる時、組織への帰属感や誇りを感じることができます。

組織におけるプロソーシャル・モチベーションの促進

組織がプロソーシャル・モチベーションを促進するためには、以下のような戦略が有効です。

  • プロソーシャルな価値観の明確化
    組織のミッションやビジョンを明確にし、社会的責任を果たすことを価値観として打ち出すことが重要です。
  • コミュニティとの連携
    地域社会や非営利団体と連携し、従業員が参加できるボランティア活動を組織的にサポートします。
  • 報酬と評価のシステム
    プロソーシャルな行動を評価し、報酬の一部として認識することで、従業員のプロソーシャル・モチベーションをさらに促進できます。

プロソーシャル・モチベーションは、個人と組織の両方に多大な利益をもたらし、より持続可能で倫理的な社会を築く基盤となる重要な概念です。

ペンシルべニア大学の組織心理学を専門とするアダム・グラント教授の研究では、内発的動機とプロソーシャルモチベーションを組み合わせることが個人のクリエイティビティや生産性を向上させるとされています。

これは、仕事を通じて自己のスキルや能力を伸ばすこと(内発的動機)と同時に、他人や社会への貢献を意識すること(プロソーシャルモチベーション)が重なる場合、個人のモチベーションが高まり、より創造的で効率的な成果をもたらすという意味です。

モチベーションが高い企業組織を作るために必要な要素

1.価値観と目標の共有

組織のミッションや価値観が社会的貢献を強調し、それが従業員に明確に伝えられることが重要です。従業員が自分の仕事がどのように社会的な影響を与えているのかを理解し、共感することでモチベーションが高まります。

2.自律性の提供

従業員に対して高い自律性を提供し、彼らがどのように仕事を進め、どのように問題を解決するかについての選択肢を与えます。これにより、内発的動機が促されます。

3.適切なフィードバックとサポート

創造的なアイディアや取り組みを認め、正のフィードバックを提供する文化を育むことが必要です。また、リスクを恐れずに新しいアイディアを試せる環境を提供することも大切です。

4.社会的な目的を組み込んだプロジェクトの推進

企業が社会的な目的を具体的なプロジェクトやイニシアティブに組み込むことで、従業員が自分たちの仕事が大きな意味を持っていると感じるようにします。

モチベーション向上に寄与した企業の事例

トヨタ自動車

トヨタ自動車は「トヨタウェイ」として知られる独自の企業哲学を持っており、それには「尊敬とチームワーク」という価値が含まれています。

この哲学は従業員が自らの業務を通じて会社だけでなく、社会にも貢献することを奨励しています。また、環境技術の開発におけるリーダーシップを通じて、持続可能な社会づくりに貢献しています。

富士通

富士通は、企業の社会的責任(CSR)活動に積極的で、特に「地球環境保護」と「社会貢献活動」に力を入れています。従業員が参加できる社会貢献プログラムを多く設け、環境保護や社会貢献を通じて従業員のプロソーシャルモチベーションを高めることを目指しています。

パナソニック

パナソニックは、持続可能な社会を目指した経営を行っており、「社会に貢献すること」を経営理念の一部として掲げています。環境への配慮を始めとする社会貢献活動に従業員が積極的に参加することで、個人のモチベーションと企業全体の目標とを同調させる試みを進めています。

サイボウズ

サイボウズは、従業員の自由度が高く、ワークライフバランスの取り組みにも積極的です。従業員が自己の価値観と合致した方法で働くことができ、社内外のコミュニティへの貢献も奨励しています。これにより、従業員は自己実現とともに社会への貢献を感じることができます。

これらの企業は、従業員が自分たちの仕事を通じて社会に何らかの良い影響を与えることができると信じられるような環境を提供することで、内発的およびプロソーシャルモチベーションの向上を図っています。

Google

Googleは従業員が自身のプロジェクトに自由に取り組む時間を提供(有名な「20%の時間」)することで知られています。この施作は従業員が内発的に動機付けられ、同時に新しい技術やサービスが社会に貢献する方法を模索することを奨励しています。

Patagonia

環境保護に重点を置くアウトドア用品メーカーで、製品の販売から生じる利益の一部を環境保護活動に寄付しています。従業員は自分たちの努力が環境保全に直接貢献していると感じることができ、これがプロソーシャルモチベーションを促します。

このような取り組みは、内発的な動機と社会への貢献を同時に促進することで、従業員の満足度と生産性を高め、企業の長期的な成功に寄与します。

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    この記事を書いた人

    経営戦略、事業戦略、マーケティング戦略など戦略領域でスタートアップから大企業まで600社以上の支援実績を持つ。

    経営学、行動経済学などのアカデミズムの知をビジネスに実践的に取り入れたコンサルティングを得意とする。

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