事業企画からマーケティング戦略まで:新規事業開発のための究極のフレームワーク集

新規事業開発には様々な進め方がありますが、大枠の進め方として、まず事業企画の立案、企画の実現性検証、マーケティング戦略策定へと進めていきます。そこで今回は新規事業の企画はどうのように進めればよいのか、実現性をどのように検証すればよいのか、マーケティング戦略をどのように策定すればよいのかについて新規事業の企画フェーズ、事業の実現性検証フェーズ、マーケティング戦略フェーズに分けて有効なフレームワークをご紹介します。

目次

新規事業企画フェーズに有効なフレームワーク

1)ブルーオーシャン戦略

ブルーオーシャン戦略は、競争が激しい既存市場(レッドオーシャン)を避け、新しい市場空間(ブルーオーシャン)を創出し、そこで独自の価値を提供することを目指す戦略です。この戦略の中心には、「価値革新」があります。価値革新は、コスト削減と顧客価値の向上の両方を同時に追求することにより、新しい市場を生み出すことを指します。

ブルーオーシャン戦略の主要なフレームワーク

①戦略キャンバス

戦略キャンバスは、業界が競争している要素と、顧客がどの程度その要素に価値を置いているかを視覚化します。競合他社との比較を通じて、どの要素を減らす、削除する、上げる、または作り出すかを決定します。

例えば、航空業界で言えば、価格、快適さ、接客サービスなどが要素になります。

2024年版:テクノロジーを活用したブルー・オーシャン戦略の再定義|MarTechLab(マーテックラボ)

※参照元:【新版】ブルーオーシャン戦略

②フォー・アクション・フレームワーク

ブルーオーシャン戦略の核心の一つである「フォー・アクション・フレームワーク」は、市場での新しい価値創造と競争からの脱却を目指すための有力なツールです。

このフレームワークは、製品やサービスの特性を根本的に見直し、新しい市場空間を創出するために、以下の四つのアクションを使用します。

  • 削除(Eliminate): 業界が当たり前と考えている要素を完全に削除します。
  • 削減(Reduce): 競争業界が重視しているが顧客にとって過剰な要素を削減します。
  • 上昇(Raise): 業界の基準以上に顧客が価値を感じる要素を向上させます。
  • 創造(Create): 完全に新しい要素を作り出して、市場に新たな価値を提供します。

これらの各アクションについて、詳しく解説します。

  • 削除(Eliminate)
    このステップでは、業界が長年当たり前としてきたが、実際には顧客にとってそれほど価値がないとされる要素を完全に取り除きます。これにより、コストを削減し、よりシンプルな製品やサービスを提供することが可能になります。例えば、航空業界での格安航空会社は、無料の機内食や座席指定サービスを削除することで、低コストを実現しています。
  • 削減(Reduce)
    このアクションでは、業界標準とされている水準を下回るレベルまで特定の要素を削減します。この目的は、コスト構造を合理化し、顧客が必要としない過剰なサービスや機能を省略することにあります。これにより、企業はより競争力のある価格を提供することができます。
  • 上昇(Raise)
    このステップでは、業界が提供している基準以上に、顧客が真に価値を感じる要素を強化します。これにより、顧客満足度を高め、製品やサービスの差別化を図ることが可能になります。例えば、高級ホテルが提供するパーソナライズされた顧客サービスは、顧客体験を高めるためにこれまで以上に強化されることがあります。
  • 創造(Create)
    業界でまだ誰も提供していない全く新しい要素を創造することです。このアクションにより、全く新しい市場ニーズを生み出し、他の競争者とは異なる独自の価値を顧客に提供します。創造することで、市場に新しい基準を設定し、ブルーオーシャンを形成することが可能です。例えば、スマートフォンの登場は、通信と情報アクセスの方法に革命をもたらしました。

◆実践例

これらのアクションを組み合わせて使用することで、企業は競争の激しいレッドオーシャン市場から脱却し、新しい市場空間であるブルーオーシャンを創造することができます。具体的な実施例としては、サーカス業界のシルク・ドゥ・ソレイユが挙げられます。彼らは伝統的なサーカスの動物ショーを削除し、成人向けの芸術的で劇場的な要素を創造することで、全く新しいエンターテインメントの形を生み出しました。

③ERRCグリッド(Eliminate-Reduce-Raise-Create Grid)

ERRGグリッドは、フォー・アクション・フレームワークを具体的な形で実行するためのツールです。このグリッドを用いて、上記の各アクションを明確にマッピングし、どのように事業を再構築するかを計画します。

2)SWOT分析

強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)を分析し、事業の可能性を明確にします。

重要なポイントとして、

  • 自社の強みをさらに活かせる機会はないか
  • 自社強みをもって脅威を克服できないか
  • 自社の弱みを補強することはできないか
  • 弱みを踏まえ、脅威からの影響を最小限に抑えることはできないか

この4つの視点で新規事業を検討します。

3)ビジネスモデルキャンパス

ビジネスモデルキャンパスとは、事業の構成要素を一覧できるフレームワークで、価値提案や顧客セグメント、収益の流れなどを視覚的に整理することができます。

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    実現性検証フェーズに有効なフレームワーク

    次に立案した事業アイデアの実現可能性を検証し、リスクを評価するフェーズに有効なフレームワークをご紹介、解説します。

    1)リーンスタートアップ

    リーンスタートアップとは、仮説を立て最小限のリソースを使用して製品やサービスを迅速に市場に投入し、顧客の反応を基に改善を繰り返すことで無駄を削減、リスクを軽減しながら効率的な事業開発を進める手法のことをいいます。

    2)MVP(最小限の機能を持つ製品)

    製品やサービスの最小限のプロトタイプを早期に市場に投入し、顧客の反応を測定しフィードバックをもらうことで、素早くフィードバックループを回転させ、製品がユーザーの需要に応えているかについての仮説を検証します。製品開発にムダな時間やコストをかけずに顧客が求める製品を開発することができます。

    3)フィージビリティスタディ

    フィージビリティスタディ(実現可能性検証)は、新規事業のアイデアが実際に実行可能かどうかを評価するための詳細な分析プロセスです。

    これは、プロジェクトや事業が技術的、経済的、法的、運営的な観点から実行可能であるかどうかを検証するために行います。

    マーケティング戦略フェーズ

    新規事業アイデアが実現可能性検証を経て、事業化を進めることとなった場合、具体的なマーケティング戦略の策定が不可欠です。そこで最後のフェーズとしてマーケティング戦略策定に有効なフレームワークをご紹介、解説します。

    ①STP分析(Segmentation, Targeting, Positioning)

    STP分析とは、セグメンテーション(市場細分化)、ターゲティング(ターゲットとする市場の決定)、ポジショニング(自社の立ち位置の明確化)の3つの英単語の頭文字をとって名付けられた分析法です。

    自社が狙うべき市場はどこなのかを明確にし、競合が少ない(またはいない)ポジションはどこかを可視化する為に有効なフレームワークです。

    ②4P分析(Product, Price, Place, Promotion)

    4P分析は、製品(Product)、価格(Price)、場所(Place)、プロモーション(Promotion)の4つの要素で分析をするフレームワークです。

    4P分析は製品視点(企業視点)で考えるフレームワークの為、視点が企業よりに傾きがちです。そのため、後述する顧客視点での分析ツール「4C分析」とセットで分析することが重要です。

    製品(Product)

    提供する製品やサービスの特性、品質、デザイン、機能、ブランド名など。

    価格(Price)

    製品の価格設定、割引、支払い条件、信用条件など。

    場所(Place)

    製品がどのようにして顧客に届けられるか、流通経路、物流、在庫管理など。

    プロモーション(Promotion)

    広告、プロモーション、SNSなど、製品を市場に知らせるための活動が含まれます。

    ③4C分析(Customer Value、Cost、Convenience、Communication)

    4C分析は顧客中心のアプローチで、顧客の欲求とニーズに焦点を当てたマーケティングの分析手法です。

    4Cは顧客価値(Customer Value)、コスト(Cost)、利便性(Convenience)、コミュニケーション(Communication)の4つの要素で分析します。

    顧客価値(Customer Value)

    顧客が製品を購入する際に求める価値や利益です。製品が解決すべき顧客の問題やニーズにどう応えるかが鍵となります。

    コスト(Cost)

    顧客が製品やサービスに対して支払う総コストを指します。これには価格だけでなく、取得するためにかかる時間や労力も含まれます。

    利便性(Convenience)

    製品やサービスが顧客にとってどれだけ簡単に入手できるかです。購入プロセスの簡便さや購入後のサポートも考慮に入れます。

    コミュニケーション(Communication)

    企業と顧客間の対話をどのように行うかです。一方的なメッセージ送信ではなく、顧客との双方向のコミュニケーションを重視します。

    ④デジタルマーケティング

    デジタルマーケティングは、インターネットやIT技術など「デジタル」を活用して顧客とのエンゲージメントを高め、製品やサービスを宣伝する一連のマーケティング手法です。

    デジタルマーケティングの成功には、多様な手法が組み合わされますが、具体的なフレームワークや戦略をご紹介します。

    1)SOSTAC® プランニングモデル

    SOSTAC®は、マーケティングとコミュニケーションの専門家であるPR Smith (Paul R. Smith)により開発されました。SOSTAC® は、デジタルマーケティング戦略を計画するための効果的なフレームワークで、以下の6つの段階から構成されています。

    STEP
    S (Situation) – 現状分析

    この段階では、現在のビジネス状況、市場環境、競合分析を行います。主要な分析ツールにはSWOT分析(Strengths, Weaknesses, Opportunities, Threats)、PEST分析(Political, Economic, Social, Technological)、競合分析が含まれます。この情報は、ビジネスが直面している課題と機会を明確にし、計画の基盤となります。

    STEP
    O (Objectives) – 目標設定

    ここでは、具体的かつ測定可能な具体的な目標を設定します。

    SMART基準(Specific, Measurable, Achievable, Relevant, Time-bound)を用いて目標を定義すると効果的です。目標は、売上増加、市場シェアの拡大、ブランド認知度の向上など、さまざまな形で設定されます。

    STEP
    S (Strategy) – 戦略

    戦略段階では、設定した目標を達成するための全体的なアプローチを決定します。ターゲット市場の選定、ポジショニング戦略、成長戦略(例:市場浸透、市場開発、製品開発、多角化)などが含まれます。このステージで、どのように市場と対話し、顧客と関わるかの基本的な方向性が定められます。

    STEP
    T (Tactics) – 戦術

    戦術では、具体的なマーケティングミックス(4P:Product, Price, Place, Promotionや4C:Customer Value, Cost, Convenience, Communication)を策定します

    STEP
    A (Action) – 実行計画

    戦術を実行するための詳細な計画を作成します。

    行動計画段階では、戦略と戦術を実行するために必要な具体的なアクションとタイムラインを決定します。各アクションには、責任者、必要なリソース、期限が割り当てられます。

    STEP
    C (Control) – 評価と管理

    最終段階では、実施された活動の効果を測定し、計画の進行状況を評価します。パフォーマンス指標(KPI)、ROI(投資収益率)、顧客満足度などが評価ツールを用いてパフォーマンスを追跡・検証し必要に応じて計画を調整します。

    Controlフェーズでは、策定した戦略や計画を得られたデータから正しい方向や目標へ絶えず軌道修正していく為のフェーズであるため詳しく解説します。

    評価と管理の具体的な手順

    • パフォーマンス指標の設定と追跡
      KPIを事前に定義し、これらの指標を通じてキャンペーンの成功度を測定します。
      例)ウェブサイトのトラフィック、リードの獲得数、コンバージョン率、ソーシャルメディアのエンゲージメントなど。
    • ROIの計算
      投資収益率(ROI)を計算して、マーケティング活動によって生成された収益が投じたコストを上回っているかを確認します。ROIは財務的な成功の主要な指標として機能し、戦略的な意思決定に役立てられます。
    • 顧客満足度の評価
      定期的な顧客調査やフィードバックツールを使用して、顧客満足度を測定します。顧客満足度の評価には、例えば顧客保持率やリピート購入率の追跡も検討します。
    • データ分析とレポーティング
      収集したデータを分析して、具体的なインサイトを抽出し、報告書にまとめます。これには、デジタルアナリティクスツールの使用や、パフォーマンスデータを視覚的に表現するダッシュボードの開発が含まれることがあります。
    • レビューセッションの実施
      定期的にチームミーティングを開催し、実施した活動の結果を共有し、今後の改善点を議論します。これにより、チーム全体の認識を一致させ、持続可能な改善活動を推進します。
    • 計画の調整と改善
      レビューを基に、計画に必要な調整を行います。市場の変化や新たな顧客データに基づいて戦略を更新し、次の計画期間に向けた目標と戦術を改定します。

    この「Control」ステージは、マーケティング計画の持続的な成功を確保するために、実行の質を高め、効率を改善し続けるための重要なフェーズです。計画の有効性を定期的に評価し、適宜調整を行うことで、目標達成の確率を高めることができます。

    2.デジタルマーケティングファネル

    デジタルマーケティングファネルは、顧客の購買行動プロセスをステージに分け、それぞれのステージごとでの顧客との最適なタッチポイントを検討するためのフレームワークです。

    ファネルとは漏斗のことをいいます。以下に説明するプロセスが漏斗の形、つまり逆三角形になることからそのように呼んでいます。

    ①認知  (Awareness)

    ブランドや製品について顧客に知ってもらいます。

    ②興味・関心(Interest)

    ブランドや製品について興味・関心をもってもらいます。

    ③比較・検討(Consideration)

    顧客が製品やサービスを他社製品やサービスと比較・検討する段階です。

    ④購入・申し込み(Conversion)

    実際の購入や申し込みへと誘導します。

    ⑤ロイヤルティ (Loyalty)

    顧客がリピーターになるよう促し、長期的な関係を築きます。

    ⑥推奨 (Advocate)

    満足した顧客が他の潜在顧客に推薦するよう動機付けします。

    3.コンテンツマーケティング戦略

    コンテンツマーケティングとは、ターゲットユーザーへ価値のあるコンテンツを配信することでリードの獲得、商品購入やサービス利用を促す、顧客との継続的な関係性を構築しLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)を高める為に有効な戦略です。

    一般的な進め方は以下です。

    STEP
    コンテンツの企画と制作

    ターゲットユーザーにとって価値のあるコンテンツ(ブログ記事、メルマガ、SNS、動画など)を作成します。

    STEP
    SEO最適化

    コンテンツが検索エンジンで高ランクされるように、適切なキーワードの使用や技術的なSEO対策を行います。

    STEP
    配信とプロモーション

    ソーシャルメディア、メールマーケティング、その他のチャネルを通じてコンテンツを配信し、関連性の高いオーディエンスにリーチします

    これらコンテンツの運用は、ターゲットオーディエンスの反応を計測し定期的にコンテンツの修正を行います。

    まとめ

    今回ご紹介したフレームワークは新規事業企画から実現性の検証、そして実行フェーズでのマーケティング戦略に至るまで一連のプロセスで活用できるフレームワークです。

    どのフレームワークが自社の事業にマッチしているかなど自社の様々な環境(社内組織の能力、市場環境、事業環境など)により最適なフレームワークを選定することが重要です。

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      この記事を書いた人

      経営戦略、事業戦略、マーケティング戦略など戦略領域でスタートアップから大企業まで600社以上の支援実績を持つ。

      経営学、行動経済学などのアカデミズムの知をビジネスに実践的に取り入れたコンサルティングを得意とする。

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