経営者必見!エージェンシー理論で実現する“信頼される組織”のつくり方

❶ 導入:なぜ今「信頼される組織」が必要なのか
多くの企業が「人材不足」「若手の定着率低下」「社内コミュニケーションの分断」といった課題に悩んでいます。背景にあるのは、単なる制度や待遇の問題ではなく、“信頼関係の欠如”です。とくに中小企業や中堅企業においては、経営者の意図が現場まで伝わらなかったり、従業員が経営の意思決定を理解しきれなかったりといった、“見えない壁”が存在します。この壁を理論的に説明し、解決の糸口を示すのが「エージェンシー理論(Agency Theory)」です。
❷ エージェンシー理論とは?──経営者と従業員の間にある“見えない壁”

理論の基本構造
エージェンシー理論とは、「ある主体(プリンシパル)が、別の主体(エージェント)に業務を委託する関係性」を分析する経済学・経営学の理論です。
- プリンシパル:経営者、株主などの委任者
- エージェント:従業員、管理職などの受任者
この関係の中で生じる問題が、
- 情報の非対称性
- モラルハザード(=自己利益を優先する行動)
- 利害の不一致
といった課題です。
それぞれの内容について詳しく見ていきましょう。
情報の非対称性
プリンシパル(経営者)は経営全体の状況や目標、ビジョンなどを把握している一方、エージェント(従業員)は現場業務の範囲でしか情報を持ちません。この情報量や質の差が意思疎通のズレを生みます。
たとえば、経営層が「顧客満足度を重視して改善活動を行いたい」と考えていても、現場では「数値目標だけが重視されている」と捉えられてしまうことがあります。結果として、現場は経営の意図に反した行動を取ることになり、組織全体の方向性にばらつきが生まれます。
モラルハザード
プリンシパル(経営者)は経営全体の状況や目標、ビジョンなどを把握している一方、エージェント(従業員)は現場業務の範囲でしか情報を持ちません。この情報量や質の差が意思疎通のズレを生みます。
たとえば、経営層が「顧客満足度を重視して改善活動を行いたい」と考えていても、現場では「数値目標だけが重視されている」と捉えられてしまうことがあります。結果として、現場は経営の意図に反した行動を取ることになり、組織全体の方向性にばらつきが生まれます。
利害の不一致
プリンシパルとエージェントが、それぞれ異なるゴールや評価軸を持っている場合、行動の優先順位にもずれが生じます。経営者は「組織全体の最適化」を目指しているのに対し、従業員は「部署の目標」や「自身の評価・昇給」を重視する傾向にあります。このような利害の不一致は、組織の中でサイロ化(縦割り)や衝突を引き起こしやすく、結果として信頼関係の損失につながっていきます。
エージェンシー関係の構造

たとえば、経営者が「顧客満足度を高めたい」と思っていても、従業員が「効率的に仕事を終わらせたい」と考えていれば、行動にはズレが生じます。このズレこそが、組織の中で“信頼関係の断絶”を生む原因です。
❸ 中小企業こそ陥りやすい「情報の非対称性」とは
なぜ「経営の意図」が伝わらないのか?
中小企業では、経営者の頭の中にあるビジョンや意図が、十分に組織内へ浸透していないケースが多々あります。
・経営者は「経営全体のバランス」を見て判断している
・現場の従業員は「自分の担当業務」しか見えていない
このギャップが、「情報の非対称性」です。
現場の誤解が信頼を損なう
・「方針がよく分からない」
・「自分たちの意見は聞いてもらえない」
・「急に施策が変わる、ついていけない」
こうした声が出ると、社員のエンゲージメントは下がり、最悪の場合「経営への不信」へとつながります。

❹ 信頼構築のために必要な3つの視点
エージェンシー理論では、以下の3つのアプローチによって関係性の改善が可能だと示されています。
- インセンティブの整備
人は報酬や評価によって行動を選択します。そのため、従業員の動機を経営目標と一致させるには、「成果に応じたインセンティブ制度」の構築が不可欠です。
・成果と報酬を明確に連動させることで、従業員の行動が戦略に沿ったものになります。
・数字だけでなく、顧客満足度やチーム貢献など定性的な評価も取り入れることで、バランスの取れた行動を促進できます。 - 情報の開示・透明性の向上
信頼関係の鍵は「見える化」です。情報が開かれていることで、従業員は「自分も経営の一部である」と感じやすくなります。
・経営会議の議事録を一部でも共有する、業績数字をグラフで可視化するなど、経営層の考えを見える形で伝えましょう。
・社内報や朝礼でのメッセージ発信、定期的なタウンホールミーティングなども、双方向の理解を深める手段として有効です。 - モニタリングの仕組み化
監視ではなく、対話のある「見守り」が大切です。信頼関係を築くには、定期的なコミュニケーションを制度として設けることが重要です。
・1on1面談、チームごとの振り返りミーティング、プロジェクト後のレビューなどを定期的に実施することで、信頼構築の場が生まれます。
・また、現場からの声を拾う仕組み(例:匿名フィードバック、社内アンケート)を整備することで、経営陣と現場のズレを最小化できます。
3つの改善ポイントのマトリクス図

❺ エージェンシー理論を活かす実践ステップ
理論を知るだけでは組織は変わりません。信頼関係の再構築には、実際の制度設計や行動レベルでの変革が必要です。以下のステップを通じて、理論を経営に生かしていきましょう。
ステップ1:関係性の可視化
まず必要なのは、「現場とのギャップはどこにあるのか?」を明らかにすることです。
- 従業員満足度調査や匿名アンケート、1on1面談などを通じて、率直な声を集めましょう。
- 特に「何が分かりづらいか」「何が信頼を損なっているか」を把握することが重要です。
ステップ2:制度設計に理論を反映
課題が可視化できたら、実際の制度や文化に反映していきます。
- 評価制度や報酬制度にインセンティブの視点を取り入れ、「成果が報われる仕組み」を明確に構築します。
- 情報の開示についても、経営層の発信力を高めると同時に、社内での透明性を高める制度やツールを導入します(例:社内SNS、経営ダッシュボードの導入など)。
ステップ3:PDCAと第三者視点の導入
制度を導入したら、運用しっぱなしにせず、常に改善を前提に動かします。
- 毎月・四半期単位での振り返りと評価を行い、「実際に信頼関係が改善されたか?」を確認します。
- 必要に応じて、外部アドバイザーや第三者の目を入れることで、内部では見落としがちなバイアスも補正できます。
実際、当社「くじら」でも中小企業向けに、経営理論をベースとした制度改革や評価制度設計の支援を行っており、経営者と現場の“見えない壁”を取り払う支援をしています。
❻ まとめ
理論は現場でこそ生きる
エージェンシー理論は、決して大学の講義で終わる抽象理論ではありません。むしろ、**信頼される組織をつくりたいと願う経営者こそが活用すべき“実践の知”**です。
- 経営者と従業員の関係性を見直す
- ギャップを理解し、構造的に解決する
- 信頼を生む仕組みとして理論を活用する
このように、「理論を経営の武器にする」ことこそが、持続可能な組織の基盤をつくる鍵になります。
私たちくじらでは、こうした経営理論を活かした支援を通じて、経営者と従業員がともに信頼でつながる“強い組織”づくりを支援しています。
次は、あなたの番です。 “信頼される経営”を、エージェンシー理論から始めてみませんか?
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